人工知能に精神科医(わたし)が脅かされた話😂w
こんにちは、精神科医の諸藤えみりです。
今日はわたしのなんてことない日常です。
「ついに人工知能(AI)がわたしの立場を脅かすようになったか…」と感じた話です🤣
わたしの外来に通われている患者さんがいます。
最近は症状も落ち着いて元気そうです。
何気なしに「調子が良さそうですね。」と聞いてみると、
彼からこんな答えが返ってきました。
「そうなんです!毎日AIに話を聞いてもらっているんです!」
……………え??なんて????
よくよく話を聞くと、毎日AIのアプリと会話しているとのこと。
「人と会話しているみたいなんですよ!」
と言われます。
AIは原因を分析し、今後の対策も考えてくれるそうです。
たとえば、職場で先輩から注意を受けたとします。
今まではその出来事を引きずって自分を責めていたらしいのですが、AIに話をすることで気持ちの整理ができるようです。
「前向きになれるよう、どう行動したらいいのかも教えてくれるんです」とも言われていました。
ここまで聞いて
「アレ??これ、わたし、必要なくない?
AIがいれば精神科医の仕事ってなくなるんじゃない😱?!」
と、震えあがりました。
AIは精神科医よりも高精度でメンタルヘルスの状態を判定できるという論文もあるみたいです。
わたしがアワアワしていると、この患者さんは慌てて
「大丈夫です!
AIは『医療と法律の分野はデータ不十分で分かりません。』と言っていました。
僕の仕事内容のことを聞いてみても、間違ったことを言っていました。
AIは専門分野になると急に弱くなります。
AIを日々の生活に使用するけれど、信用はしていません。」
と、フォローしてくれました。
それでも焦ったわたしは帰宅後、実際にChatGPTに質問してみました。
質問内容を適当に考えてみます。
「夜あまり眠れず、仕事への意欲も落ちています。どうしたらいいですか?」
すると、睡眠習慣に問題はないか、食事や運動はどうか、職場の環境は大丈夫かなど、親身になって答えてくれました。(とてもちゃんとしている、、、)
考えることで生活習慣を振り返ることができそうです。
が、そこから話が深まりません。
ネットで検索すれば得られそうな情報ばかりで、不特定多数の人に当て嵌まりそうな情報を羅列しているだけです。
「ストレスで夜眠れない人は、これじゃ解決しないだろうな…」と思ったり。
精神科は「今の症状を聞いて終わり」ではありません。
成育歴が非常に大切で、目の前の方がどのような人生を送られてきて、どのような人格形成にいたったかなどの背景にも着目します。家族や社会(学校や仕事など)での人間関係にも着目します。
わたしは、患者さんが診察室に入ってこられたときの歩き方、服装、表情、会話のスピード、声の大きさなど、症状以外の部分も診察しています。
つまり、表情がなく小声でボソリと「しんどいです」と言われる場合と、元気よく「しんどいです」と言われる場合とでは、状況が異なります。
患者さんの心理社会的背景や、言葉では表せない雰囲気を今のAIは判断できません。
また、AIは短時間に大量のデータを取り入れることや、過去にアップされたデータを分析することが得意です。
つまり、「過去」は得意なのだけれども、「未来」がないのですね。
この「未来」、つまり、目の前の方に合わせた今後の方向性をいかに指し示せるのかが精神科医の力量なのかなぁとぼんやり考えました。
もう一つ。
人が悩みを相談したり打ち明けたりするとき、答えだけを求めているのではありません。
心から自分の話を聞いてもらえた、共感してもらえた、人として扱ってもらえたなど、コミュニケーションを欲しているのです。
わたしたちは人と交流することで気持ちが楽になります。
AIをコミュニケーションの面から考えると、少し物足りないかもしれません。
しかしながら、この患者さんのように、AIとのチャットのやり取りだけでもメンタルヘルスのサポートはできそうです。
AIによるメンタルチェックで、症状の初期段階で適切な医療に繋がることも期待できます。
AIの得意な分野を認めつつ、医療の共存が望ましいなと感じました。
オマケ
わたし
「今日患者さんからAIとやり取りしていると聞いて、精神科医が必要なくなるのではないかと思ってヒヤヒヤしたよ~。」
夫
「AIと言えばさ、ドラえもんって、AIに心が宿っていると認識でいいのかな?そこのところどう?」
……………急に難しいこと言うじゃん。

